スタッフブログ
2015/12/18
家づくりを改めて基礎から考える。(本文)
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家づくりを改めて基礎から考える。(その1)15年経った今だから判る事
15年前、弊社は一工務店の立場ながら、日本の家造りに疑問を持ち、ハウスメーカーは勿論、幾多のフランチャイズビルダーの家造りを見聞きしてきました。
まず、コストの問題。
ハウスメーカーやフランチャイズビルダーは、基本的に下請け制度で成り立っています。
ハウスメーカー(工場生産型住宅会社)は、現場では直営の職人が居ません。ケーズホームがこの15年間向かってきた家造りを一から洗い出してみることにしました。
地域の下請け工務店を利用し、看板を付けさせ、現場職人のみ手配させるやり方です。
確かに工場生産すれば、製造原価は抑えられますが、管理費や設備償却、運搬費などが膨らみ、結果、工場は子会社経営、研究開発部門と営業部門、宣伝費やモデルハウス運営費など、
経費は膨らむばかりで、安く造ることなど、絶対に出来ない構造です。
自動車のような、完成品を出荷できる工場なら、その性能や価値を比較できますが、家はそうはいきません。
改めて基礎から考える。(その2)受注ありきの営業はしたくない
フランチャイズチェーンに加盟したビルダー(工務店)は、営業経費や宣伝広告費として
本部に上納しなくてはならず、多いところでは15%以上(契約額の)を求めるところもあります。
そうでなくても、開発を本部でするため、勝手に材料を変えたり購入したりできず、本部から仕入れなくてはいけません。
当然、価格は本部で決められます。
家造りは、「地球温暖化を防止する大きな役割を果たす」として、世界的に急速な進歩を遂げています。
ほんの少し前にはペアガラスが主流でしたが、今ではトリプルガラスが当たり前、それもアルミサッシは絶滅寸前で、アルミメーカーですら<樹脂製>を強調するくらいです。
パッシブハウス(自然温熱利用型の家造り)など海の向う(ドイツ)の話かと思っていたら、国交省が住宅性能義務化を2020年から始める、と言い出しました。
小さなビルダー(工務店)である私たちが、そうした変化に一番早く対応する必要があるのです。
改めて基礎から考える。(その3)同志をつくる事でコストを下げる
そうなると、やはり選択肢は独立型地域ビルダー(街の工務店)しかないか。
早い話が、今のまま進む事に。
しかし、アンテナは張りたいし、少しでも安く仕入れたい。
決まった材料であれば、安いに越したことはない。
年間着工件数を少しでも多くしなければいけない。
弊社だけでは無理な話だが、同志を捜して賛同を得て、共同仕入れや共同研究などを広げる必要がありそうだ。
とりあえず、愛知県内に3社ほどと、岐阜、長野にそれぞれ1軒の計5社が賛同してくれた。
と言っても、造り方はそれぞれ。
お互いに地域性や会社のポリシーを大切にして、過度に合わせない「共同研究グループ」の ようです。
知多半島と長野の家づくりが同じはずがない、のだから。
例えば基礎工事、愛知県は東南海沖地震が危険視されている地域、長野は場所によっては直下型地震も有りうるが、基本的には大型地震の危険は少ない。
また、冬季の冷え込みが全く違うので、基礎断熱の考え方も違う。
改めて基礎から考える。(その4)常識はどのように作られるか
基礎断熱はシロアリに弱い!?
知多半島は、年平均気温が17℃前後で、本州の中でも比較的温暖だ。
そこで、弊社では10年ほど前から、基礎コンクリートの外側に断熱材を張り、基礎断熱を採用してきた。
最近では、この工法がかなり一般化してきたようだが、ここに問題が生じて来た。
シロアリだ。
元々日本のシロアリは、木の根っこや幹に生息し、湿り気の多い家の壁などに侵入する。
5月~6月にかけて新しい巣を求めて、ハネアリが移動して行く。
基礎断熱に使うEPS断熱材は、シロアリにとって餌ではありませんが、硬くないので蟻道を造り易いとされている。
北海道など寒冷地では、基礎の外側で断熱する事が常識ですが、シロアリの生息域になっていないのも事実だ。
ですから、何も対策せずに基礎断熱をしたら、当地区では危険だとも言える。
現に実害が見受けられるようだ。
その為、一部では「基礎断熱はシロアリに弱いからダメだ」との声もある。
改めて基礎から考える。(その5)常識は変えられる
シロアリ研究家は、「シロアリに抵抗することは不可能だ」と言う。
では、木造の家は全てシロアリに喰われてしまうのか?
シロアリの為に<基礎断熱>を諦めるには、余りにも大きな損失ではないだろうか?
だが、私は30年間に多くの住宅をリフォーム、解体に立ち合ったが、シロアリの存在は必ずしも恐怖の対象ではない。
確かに、浴室の土台や台所の壁、雨漏りした軒から侵入したケースなど、事例は様々だったが、基本的には水分を含んだ木材に巣が有り、その界隈に生息していた。
けして、水気も無く、乾燥した場所に見つけることはない。
まして、コンクリートや金属を破って内部に侵入することもない。
つまり、基礎コンクリートの外側を断熱材で包んでも、回りをコンクリートや金属で塞ぐ事で十分保護可能だ、と考える。
正しくシロアリの生体を見極め、対応することで「コンクリートの保護と建物全体を断熱するホールインシュレーションハウス」が可能になる。
改めて基礎から考える。(その6)シロアリに打ち勝つために
基礎断熱の価値を高めるには、深基礎にする必要がある。
地下50㎝下に捨てコンクリート(基礎をつくる為のレベル出しコンクリート)を厚く打つ。
この上に高さ90cmの基礎が建つ。
40cmは地表に出す為、50㎝が埋まる。
ベタ基礎内部のベースコンクリート(スラブと呼び、建物の耐震性にも影響する)の厚みが20㎝以上とれる。(鉄筋の被り厚が60㎜以上になる)
これは、鉄筋を2重に配筋するに充分な厚みがある事を意味する。(地下からの侵入は不可)
更に、外周にEPS(防蟻処理:ホウ酸化合物含浸)を型枠に沿わせてコンクリートを打つため、打継の隙間や断熱材の隙間が無くなる。
その後、外周部分の全てにクラック防止ネットを張った防水モルタルを塗る。
その時、基礎の天端より3cm程下がった処でカットし、その上にもモルタルを塗る。
そうすることで、万一断熱材内部に入ったシロアリが蟻道を作り、這い上がっても土台まで行き着かないようになる。
改めて基礎から考える。(その7)EPS断熱材一口メモ
これから家を建てられる方に、断熱材の種類や特徴、性能などを書いてみる。
基礎断熱で使う「EPS」は水性発泡スチレンの略で、体積の98%が空気で広い意味では石油製品の仲間となり、自然界には無い。
僅かながら透湿性が有り、基礎コンクリートの緩やかな乾燥を助ける。
仲間に<発泡スチロール>が有り、魚などの保冷運搬に活躍している。
断熱性能は高く、高性能グラスウールとほぼ同じ熱抵抗値だが、赤外線を通し難い事と均一の密度の為、実質は上回るといえそうだ。
弱点は、紫外線に弱いため、陽更しにすると劣化し痩せてしまう事と、密度によっては柔らかくて、すぐに凹んでしまう事だ。
前述したが、シロアリや普通蟻の蟻道にもなり易いので、住宅の断熱材として使う場合は、
全て防蟻処理(ホウ酸化合物含浸)したものを使う必要が有る。
かつて弊社では外壁の外張り断熱にも使ってきたが、防水性は高いが透湿性が低い為、現在ではあまり薦めていない。
改めて基礎から考える。(その8)新しい断熱材は環境保護型へ
基礎の断熱材は地下に埋めるため、水に強く腐らない特性が必要だ。
その点、EPSは全く問題ない。
紫外線の影響さえ避ければ100年でも劣化の心配がない。
EPSの本質は化学物質だが、そのまま室内に有っても人体への影響は殆どない。
まして、基礎の外側での使用だ。
しかし、その他の断熱使用部分を考えると、断熱材の素材や特性には慎重になる必要がある。
例えば、壁の中に入れる充填断熱材。
グラスウールの特性は、ガラス繊維であるため赤外線を透し易く、従って夏の熱(遠赤外線)の影響を受けやすい。(冬の暖房には有効)
外断熱をした建物に充填断熱として使うには、向いているかも知れない。
但し、壁内結露を絶対にしないような工夫が必要だ。
何故なら、グラスウールは一度含んだ水分を外へ逃がす、所謂<放湿性>が無い物質なのだ。
木造建物の劣化、シロアリの発生に最も危険なのは、水分が一定の場所に留まり、木材の含水率を高めてしまう事。
改めて基礎から考える。(その9)新しい断熱材は環境保護型へ
20世紀から21世紀になり、医療や科学の進歩により人の寿命は劇的に延びた。
日本も明治の末に50歳未満だった平均寿命は、100年後の今日では90歳になろうとしている。
平均寿命の伸びは人口増加にも影響している。
人口減少に悩む日本とは別に、世界の人口はこの50年で約2倍になっている。
人が長生きする事はけして悪いことではない。
が、増え続ける人口は、やがて食糧難や資源の奪い合いを引き起こしかねない。
すでにその前兆は、世界のあちこちで起きているし、日本だけ例外などはあり得ない。
資源を大切にするが必要なのは誰でも解ることだが、いざ<家造り>となったらどうすればいいのだろうか?
その提言として、持続可能な循環型社会を形成するのにどんな材料が相応しいか、を考える。
自動車はガソリンからモーターへ、モーターの駆動を入力から自家発電へ変わろうとしている。
その前段階で、軽量化などの低燃費化を図っているのも事実だ。
改めて基礎から考える。(その10)新しい断熱材は環境型
では、家の<低燃費化>はどの程度進んでいるか。
一昨年(2013年)まで日本の住宅の断熱性能を表わすには「Q値」と呼ぶ、建物から熱がどれほど逃げるか、を表わす数値を使っていた。
しかしこの計算方式は、床面積で割るので欧米に比べ建物が小さい日本の住宅では数値が見劣りする。(小さいほど性能が高いことを意味する)
そこで、昨年(2014年)から外皮平均熱貫流率の計算(床ではなく外皮面積で割る)事になり、小さな家でも誤差が出にくくした。(?)
ただ、気を付けたいのはこの数値には換気による熱損失が考慮されていない事だ。
「Q値」は換気熱損失も考慮されていた。
新築時は24時間換気を法律で義務づけしていながら、換気による熱損は数値に反映していないとは、どういう事だろう。
熱交換型の第1種換気扇と自然吸気型の2種換気では、まるで違う燃費の家になってしまうはずだ。
断熱材の話がいつの間にか性能数値の話になってしまった。
改めて基礎から考える。(その11)新しい断熱材は環境型
CO2削減が叫ばれて久しい。
住宅でも「0エネルギー」と謳って、消費電力をソーラー発電で賄い、帳尻を合わせている。