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2018/07/31
気密性能について
カテゴリー:気密性能
断熱性能のコラムで、気密の重要性をある程度、お話しましたが、快適且つ省エネな住宅を造るには、高断熱に加え高気密が必須条件です。
改めて、高気密住宅の問題とその解決を書きます。
まず、高気密住宅の定義から。
住宅の宣伝文句に「高気密高断熱の家」と言ったフレーズが目につきます。
何を隠そう、K’z-HOMEもその範疇に入っています。
では改めて、「高気密住宅」とは、どんな性能値になると、そう言えるのか?
業界での正しい取決めは有りません。
正に自主申告。
「高断熱住宅」の方は、床(基礎)、壁、天井(屋根)の6面体の全面積(窓、ドアも含む)それぞれの熱還流率を計算したものがUA値で、机上の計算になります。(実測不可)
もう一つの断熱性能を計算する方式が、Q値と呼ぶもので、UA値の計算値に換気設備の熱損失を含めたものです。
2013年までは、Q値しかありませんでしたが、2014年から住宅性能を保証する国交省の審査機関で、UA値にするように変わってしまいました。
これは、新築時に24時間換気を義務づけていて、必ず換気する事が解っていながら、換気熱損失を無視することになりますから、UA値の数値だけでは本当の「高断熱住宅」か、は判らない、とも言えます。
考えてみてください。
24時間換気の義務化は、シックハウス症候群の抑制からきていますから、2003年から建築基準法の改訂により始まっています。
Q値が取り沙汰される以前です。
その基準では、家の中の空気を2時間で入れ替える必要があります。
「高気密住宅」だ、と言ってきながら、2時間で外気が入れ替わるとは、どういう事か?
実は、24時間換気の方法に3種類の方式が認められていて、その方式によっては、全く違う結果になるのです。
第一種、第二種、第三種と分類され、第一種は換気装置に熱交換を加えた物です。
熱交換とは、室内空気と外気を入れ替えるときに、その温度差を無くすため、熱伝導の高い素子の中を通して、熱損失を少なくするものです。
第二種は、吸気時にファンを使い、排気は壁に穴を開けてするものです。
室内が常に「正圧」(外気より高い気圧)になり、耳鳴りや窓、ドアの隙間を生じ易くなります。
何より、単純に壁に穴が開いている状態の建物が「高気密住宅」であるはずが有りません。
第三種は第二種の反対で、排気側に換気扇を付け、壁の穴から外気を入れる方式です。
したがって、室内の空気は「負圧」(外気より低い気圧)になり、玄関ドアが開け難くなるなどの現象が有ります。(マンションで、キッチンの換気扇を回すと玄関ドアが開かない事がありますが、これと同じ現象です)
もちろん、壁に穴が開いているわけですから、外気がドンドン入って来ます。
真冬を想像してください。
暖房する片端から、冷たい空気が入って来るのです。
真夏も同じで、エアコンはフル稼働しても間に合いません。
ネットを検索して、第一種の熱交換型換気扇を調べると、デメリットとして、イニシャルコストと、ランニングコストとしての電気代が掛かるようなことが書いてあります。
皆さんは、どちらの方式がコストパフォーマンスに優れていると思いますか?
K’z-HOMEは、高気密型住宅をつくろうとした1998年から第一種換気システムを導入しています。
換気方式の話が長くなりましたが、気密性能を理解して頂くには是非必要だと思います。
その換気を無視して計算できるのがUA値です。
Q値は、熱損失を床面積で割り出したもので、換気扇の能力(熱交換性能)も計算します。
ですから、本当の高断熱を算出するならQ値の方がより正しく計算できるかもしれません。
肝心な気密性能は、机上での計算は意味がありません。
なぜなら、気密性を出す為には工法も大切ですが、それ以上に施工精度を求められるからです。
同じ材料、同じ工法を使っても、その取り付けが雑であれば、数値は大きく変わります。
気密性は、実測で確かめることが出来ます。
寧ろ、実測しかないのです。
量産型ハウスメーカーや、ビルダーが公表できないのも、数値が定まらない恐れがあるから、も有るでしょう。
また、数値を高めたいばかりに、気密シート(ビニールフィルム)を張って、C値0.2を達成、などと宣伝している会社も見受けます。
C値とは、床面積当りの隙間を表わした単位で、1㎡にどれだけの隙間が有るか?を計測した値です。
ですから、数値は小さい方が優れていることになりますが、室内をビニールシートで覆った家って、どうですか?
構造材のコラムでも書きましたが、室内と外気の間となる外壁は、湿気が通る事が大切です。
ビニールシートのような、透湿抵抗が高い(殆ど通さない)ものが有っては、間違いなく
壁内結露を呼び、建物の寿命に重大な影響を及ぼすように思います。
現在の高気密住宅の基準値は、東海地方Ⅳ地区では、次世代省エネ基準では、UA値0.87、C値5となっています。0.5ではありません。
ですから、殆どのハウスメーカー、ビルダー(量産型ビルダー)は、この数値を目指して建てているようです。
高気密は、C値2以下、C値0.5以下になると、「超高気密」と呼んでいるみたいです。
K’z-HOMEは、1999年から2012年までのサンプリング測定を、2013年から新築住宅の全棟を測定しています。
2013年以降の平均C値は、0.35ですから、一般的には「超高気密住宅」になります。
建物の形、開口部の部材(窓、ドア)によって若干の差が生じます。
過去5年間で、最も低い(悪い)数値が0.59、最も高い(良い)数値が0.28でした。
しかし、K’z-HOMEは、単に高気密性能だけを求めてはいません。
断熱性能のコラムでも書きましたが、気密性能を高める事は、様々なリスクを伴うのです。
まず第一に、空気の汚れ、揮発性化学物質(VOC)による汚染された空気が留まる可能性を高めてしまう事です。
片方では、省エネルギーや快適性を求めて「高気密化」を勧めながら、もう片方で換気をすることで、滞留VOCの危険から逃れる矛盾を抱えているのが、現在の日本の建築基準です。
K’z-HOMEは、単に法を守るだけでなく、本当に求められる家づくりのための基準を自ら探り、必要な性能、必要な工法を追求しています。
日本古来の家づくり、ヨーロッパ、アメリカの家づくりから得られた知識は、共通項が多く、現在の日本の家づくりとはどこか違うものを感じます。
欧米では、化学物質で造られた断熱材や、気密素材は、住宅のような「人」に近いところには、あまり使いません。
北米の住宅は、30年も前から高気密住宅の性能を持っていましたが、シックハウス問題は起きていません。
25年前(1993年)北米の住宅を視察した時、床の材料は、タイルか天然石、又は無垢のフローリング張りが殆どで、合板フローリングなど、全くありませんでした。
内装も水性塗料か紙クロスで貼られて、ビニールクロスは一切ありませんでした。
家具も合板で造られたカラーボックス的家具(日本の家具の主流)は無く、無垢の家具が当たり前のように、飾られていました。(欧米では、家具は代々受け継ぐ物のようです)
だいたい、置き家具は、テーブル,椅子、コンソール(飾り棚)くらいで、あとは作り付けのクローゼットスタイルでしたけど。
その後も何度も行きましたが、そのスタイルに変化はありませんでした。
彼らは、VOCが危険であることを理解しているだけでなく、使いどころを理解して、間違えないようにしていると感じました。