スタッフブログ
2018/07/31
断熱性能について(基礎断熱、外断熱)
まず、断熱性能に触れる前に、お伝えしたいことは、「断熱」の材料自体は、どれだけかけてもせいぜい住宅の総工費に対して、5%程度であることです。
今までの住宅は、その5%を惜しみ、1%すらも掛けて来ませんでした。
完成してからは、見えないところですから、気にしてきませんでした。
それが、日本の家が先進国中でダントツの冷暖房費垂れ流しになっている現状です。
断熱材は、完成してからでは間に合いません。
照明器具や設備や内装仕上げは、完成してからでも気に入らなければ変更可能です。
もちろん、費用は必要ですが、付帯する工事と合わせても換えたい物と同じくらい見ておけば十分でしょう。
断熱は違います。
断熱材を変える為には、外張りなら外壁工事を解体からやり直さなくてはなりません。
充填(壁の中)断熱材を入れ替えるのなら、内装工事も解体からやり直しです。
いずれも、新築後としては現実的ではありません。
新築時に十分な知識を持って判断することがとても大切です。
断熱は、日本の家づくりの歴史であまり重きを置かれなかった分野です。
かつての大工さんにとって日本の家づくりのご神託のような言が有ります。
14世紀(鎌倉時代)の人、吉田兼好が現した随筆「徒然草」に「家は夏を旨とすべし」と書かれています。
吉田兼好は、現代流に言えば随筆家ですが、当時としては偉大な知識人で、博学家でもあり、広く人々に慕われる存在だったのでしょう。
この言葉は、現近代の建築家や、大工、工務店にも受け継がれ、夏涼しい家づくりとして
冬の寒さは、厚着や暖房器具で暖めればいい!とされてきました。
その理由として、湿気こそが家の大敵であり、家を長持ちするには換気、乾燥するのが一番と考えたのです。
古い家を建て替えたい方からの言葉で、最もよく耳にするのは、冬の寒さです。
基本的に「木と土と紙」で出来た日本の家は、柱と柱の間に土が塗られ、やがて「土」が乾燥して痩せることによって、隙間が出来ました。
また、コンクリートが無かった時代は、床下に置いた石の上に(ツカ)と呼ぶ木の脚のような物で支え、なるべく乾燥するように風通しを第一に考えました。
湿気によって、木が腐るのを嫌ったことからです。
時代が進み、コンクリートが使えるようになってからも、その考えは変わらず、コンクリートに「風窓」と呼ばれる穴を開け、そこを通して空気が入れ替わるようになっていました。
つまり、床下は常に外気と同じ温度、特に冬の間はそうなっていました。
夏は、建物と床下の土の温度によってひんやり涼しい温度になります。
つまり、「夏涼しく、冬寒い」家が完成するのです。
その時点で、「断熱」という概念は存在しません。
基礎断熱について
さらに進んで、現在の家の基礎は、ほぼ全てが「ベタ基礎」と呼ぶ、床下全体にコンクリートを流し込む工法を取っています。
この工法は、耐震性を高めるだけでなく、床下の防蟻(対白蟻)や防虫、防鼠性に優れるからです。
この工法が可能になったのには、単にコンクリート技術が上がったからではなく、防湿フィルムシートが開発されたからです。
床下から出る湿気は、コンクリートだけでは遮る事は出来ません。
べーパーバリア(防湿シート)という厚手のフィルムシートを砕石の上に敷き込み、その上からコンクリートを流しこみます。
そうすることで、床下に地表から湿気が上がらなくなり、基礎の内はいつも乾燥している状態になる筈です。
ところが、ベタ基礎にしてからも依然として風穴を開けたまま、基礎の内側に外気を通す工法が行われています。
これは、真夏の35℃湿度80%の外気を床下の冷えた空間に送り込むことになり、当然の結果として、基礎内に結露が生じ、大量の湿気を発生させてしまう結果となるのです。
このことは、旧態以前の発想「床下の空気は換気をすること」から来ています。
基礎パッキンと呼ばれる、土台の下に隙間を作る工法も同じ発想です。
基礎の内側は地面の温度ですから、外気を遮ることが出来れば、その土地の年間平均気温に近くなります。
東海地区、知多半島辺りの年間平均気温は、17℃前後ですから、真夏でも20℃を上回ることなく、真冬でも15℃を下回ることなく、床下温度が保たれることになります。
もちろん、基礎のコンクリートが断熱されていなければ、そこから熱が伝わり、あるいは
逃げて、もっと大きな温度差が出来てしまうかもしれませんが。
K’z-HOMEは、2005年から基礎断熱の必要性に気付き、当初は普通の基礎高さ(H=600㎜、地面下200㎜)でしたが、より深い基礎(地面下500㎜)によって、耐震性も含め、断熱効果が高まると考え、実施して来ました。
当初の方々にお願いして、基礎の中の温度測定をした結果、真夏でも部屋の中央は18℃、
基礎の外周近くで22℃、真冬に外周で15℃、中央では17℃の結果が出ました。
測定した家は、内側への断熱材を負荷しませんでしたが、現在は内外にEPS特号断熱材を
入れ、さらに効果を高めています。(特号の熱貫流率:0.034)
基礎断熱は建物の保温効果を高めるだけでなく、床下の環境を外部から遮断する事により、
防虫防鼠などの衛生上の効果も特筆しておきます。
コンクリート中の水分がゆっくり発散されるので、2年間ほどは高湿度になります。
換気ダクトによる強制吸排気をしないと、基礎内に湿度が貯まり、カビの発生などの悪影響もありますが、換気する事で収まり、2年ほどで安定します。
もし、ベタ基礎に外気を入れ続ければ、冷やされた空気の中にある湿気は、簡単に飽和して
結露、カビの発生を防ぐ事は出来ません。
よく、シロアリ対策と称して、風穴に換気扇を付ける業者が居ますが、あれはむしろ逆効果であることになります。
湿気は、カビだけでなく腐朽菌を培養することになり、「床板がフカフカする」などの現象になって現れます。
換気扇を回しても、夏ならむしろ結露を促し、冬は床下から冷気が襲ってくる事になります。
貴方は、今まで通りの「基礎は換気する派」ですか?「基礎断熱派」ですか?
基礎を断熱したらその上に「外張り断熱」をします。
「外張り断熱」とは、建物の構造をスッポリ覆う外壁兼断熱になるものです。
主要な構造材である木材は、それ自体かなりの断熱性能が有ります。
有名なログハウス(木組み住宅)は、意外と暖かい、と言われています。
カナダの世界遺産になっているログで出来たホテルは、極寒の地に建っていますね。
数値で行くと、樹種によって違いがあるものの、桧の熱伝導率(W/mK)は、0.12で土壁の0.69に比べても5倍も断熱性能が高いことが解ります。
因みに、コンクリートは1.6、鉄は53、アルミニュームは210、単板ガラスは1.0です。
では、一般的な断熱材はどうでしょうか。
日本の住宅で最も多く使われている「グラスウール」は、密度を高めた高性能グラスウール16kで0.038、ウレタンフォームは0.024、EPS保温板1号が0.038、セルロースファイバー55kgが0.040ですから、さすがに一桁違います。
すると、柱と柱の間に充填された断熱材は、そとからサーモグラフィー(熱分布感知器)を当てると、柱や下地があるところは木の伝導率である0.12、その他が断熱材の0.04程度になっているのが、はっきり分かります。(柱部分が筋になって現れる)
これを「断熱欠損」と言い、「ヒートブリッジ現象」によって、ここから熱が出入りします。
そこで、登場するのが、外張り断熱です。
外張り断熱は、単一の素材を外壁に貼る事で、内壁をスッポリ覆い、ヒートブリッジを無くします。
外側から貼る事で、断熱欠損が無くなり、同時に気密性も高まります。
しかし、ここで問題が生じます。
構造材のコラムでお話したように、木は呼吸をしています。
大事な構造材である「木」を窒息させては、折角の外張り断熱も本末転倒です。
木の呼吸を妨げるような断熱材は使用できません。
「木の呼吸」とはどんな現象でしょうか?
酸素が欲しい?水分は?
どちらも必要ありません。むしろ不要です。
特に水分は、乾燥すればするほど、木の強度が上がります。
「木」の基本物質は炭素であり、成長時に光合成と引き換えに溜め込んだものです。
つまり、酸素は不要なのです。
動物である人間と真逆である、と考えれば理解できるでしょう。
「木」にとっての「呼吸」とは、湿度の動きであり、究極は完全乾燥ですが、そんな状況を住宅の外壁で作る事は不可能です。(宇宙空間が最も近いが、現実的ではない)
そうなると、使用出来る断熱材が決まってきます。
呼吸できる断熱材、湿度が動く(透湿)断熱材となると、ウレタンフォームやフェノール
樹脂系の断熱材はあり得ません。
彼らの出番は、コンクリートの建物や鉄骨の建物に限られるのです。
グラスウールを板状にした断熱材も有りますが、調湿という観点からは、無理があります。
残るのは、木質繊維断熱板のような、「木」を原材料にした断熱材しかありえないのです。
残念ながら、外壁に使用できる木質繊維断熱材を生産している会社は、ヨーロッパ、特に
ドイツ、スイスなどの国に集中していて、日本では殆ど作られていません。
そこで、K’z-HOMEでは、ドイツから輸入しています。
環境先進国として名高いドイツは、殆どの新築住宅で、「木質繊維断熱材」を使っています。
基礎と壁が断熱出来ました。
しかし、住宅の断熱で大切な場所はまだ出来ていません。
屋根は、夏の太陽を最も長く受け、断熱性を最も問われる場所とも言えます。
屋根の断熱は、元々寒冷地用に考えられた「断熱という概念」からすると、忘れられがちになります。
しかし、私たちが住む東海地方は、冬の寒さ以上に「夏の暑さ」が堪えます。
室内熱中症や、物置として利用する小屋裏が灼熱地獄になって、大切な物が台無しになる事もあります。
太陽は朝、東から昇って昼頃真上に来ます。その後ゆっくり西に傾いていくので、東の壁に太陽が当たっている時間はせいぜい3~4時間、南の壁は真南に向いていれば、ほんの僅かな時間(庇が有れば当たらないかも)西に傾く午後は、暖められた後なので、例え3~4時間でも厳しいですが、その間ずっと当たりっぱなしの屋根は大変です。
5時に昇った太陽は、7時過ぎまで屋根を照らすのです。
壁の断熱の3倍くらいの性能を要求されるのです。
まともな断熱材だけでは、とんでもない費用と労力が掛かってしまいます。
そこで登場したのが、「遮熱」と言う概念。
断熱ではなく、遮熱する事で、屋根下へ熱を伝えない工法です。
アルミニュウムは、熱伝導率210ですから、熱を伝え易い訳ですが、反面、熱容量が少ない為周りに与える影響は僅かです。
例えば、空気の伝導率0.024は、かなり高性能な断熱材に匹敵するので、空気を間に挟んだアルミニュウム板の反対側には、殆ど熱が伝わらない理屈になります。
キッチンのコンロ後ろに油除けのアルミシートを立てると、その裏側の空気は殆ど熱を受けません。
アルミホイールで包んだホイル焼きも、剥がすとホイルは、あっという間に冷めます。
これが、熱反射遮熱シートの原理です。
K’z-HOMEでは、8㎜の空気層を含んだアルミニュウムのシートを屋根に敷き込み、熱を和らげます。
その下に、空気の流れる層(通気層)を設けてから断熱材を壁の約1.5倍入れるようにしています。(今後、夏の気温上昇によっては、更に付加する必要が有るかもしれません)
もう一つ、断熱に大切な場所があります。
そうです、窓とドア、いわゆる開口部です。
K’z-HOMEが設定する断熱性能値は、現在次世代省エネ基準(2020年法制化基準?)の第一地区(北海道北部、東部)に必要とされるUA値0.40以下です。
なぜそのような厳しい基準にするのか?
それは、将来必ずその基準値に向かって、高められるからです。
この項である「断熱」の最初にお話したように、断熱性能を後付けすることは大変です。
外壁にしろ、内壁にしろ、大きな工事と費用が発生してしまいます。
最初にしておけば5%で済むのです。
ある意味では、最優先で考えるべく性能かも知れません。
話は逸れましたが、そのような訳で開口部の断熱性能も高度なものが要求されます。
日本の最高ランクの基準がUA値0.40を想定していますから、日本製では北海道仕様を使ってギリギリの数値となります。
ペアガラスのWLow-e(ダブルローイー、ペアの両側にエネルギーロスを防ぐ特殊加工がしてあるガラス)アルゴン入りの最高性能でもU値(熱還流率)1.6くらいになって、大きな熱損失の原因になります。
理想的には、UA値=0.40以下を目指すには、U値1.0以下が欲しいところです。
そこで、トリプルガラスの登場となったのですが、当初扱っていたアメリカ製のトリプルガラスは、ガラスこそはトリプルでしたが、枠フレームがダブル用のものを流用していたため
ガラスとガラスの間の空気層の厚みを19㎜から8㎜に薄くしてしまったため、思ったような性能を出してくれませんでした。(U値1.3前後)
更には、フレームは今までのままでしたから、樹脂と言えどもU値は低く、1.6程度。
これでは到底、UA値=0.40以下を実現出来ませんでした。
2005年~2012年までのK’z-HOMEの家は、このような状況でUA値換算(実際に計算はしていません)0.5~0.6前後と思われます。
それほど、窓からの熱損失は大きなものです。
自然光を好む日本人としては、窓面積を減らす方向は喜びません。
総壁面積の15%以上、場合によっては20%を超えてしまう場合も有ります。
(実は、ドイツでは窓面積が20%以上有る住宅を建てると、税金が高くなるそうです。)
そこで、ヨーロッパに目を転じると、北欧はもちろん、ドイツではトリプルガラスが主流で
生産設備が少量生産向きであり、性能も高いことを知り、20013年からドイツ製サッシを使用することになりました。
ドイツ製の樹脂フレームは、空気の部屋を幾重にも重ね、耐風圧、耐久性も出るようにフレームの中に鋼鉄のフレーム、フレームインフレーム構造になっています。
これで、U値1.3を確保。
更にガラスは、空気層を16㎜取り、4+16+4+16+4の総厚さ44㎜も有ります。
これにより、ガラス単体のU値は何と0.5。
つまり、窓のガラス面積が多い程U値は小さく(高く)なり、小さな窓はフレームの値に引っ張られ数値が悪くなる、と言う珍現象が。
更に、ガラス面に遮熱加工も可能ですから、直射日光を避けたい西側の窓や、UV(紫外線)
を避けたい東側の窓にも安心して使えます。
現在使用しているDAKO社製の製品には、玄関ドアも有り、こちらの木製ドアは、U値が
0.63などと、国産ではありえない数値を出しています。(デザインは、ドイツ好み?)
最近では、国産のサッシや玄関ドアも良くなってきましたので、乞うご期待ですね。
最後に玄関ドアについて
玄関ドアは、日本の住宅としては、引き戸の使い勝手が失いたくないものの一つ。
しかし、今までは引き戸の高気密、高断熱に対応出来る製品が有りませんでした。
長い事、北米のシンプソン社製の木製ドアを使ってきました。(U値2.3程度)
窓に比べて極端に性能は下がりますが、玄関ドア面積程度の差は全体においては微々たるものですので、UA値0.40を下回る事が出来ました。
しかし、確かに熱は弱いと事から伝わりますので、氷点下の日には、かなりマイナスに作用します。(結露することは無いが、室温20℃に対してドアの温度が10℃近くになる時も)
やはり、玄関ドアも最低U値1.5以下が望ましいと思います。
最近になり、日本の木を使った引き戸で、高気密、高断熱住宅に使えそうなものがでてきましたので、この夏(20018年)早速使ってみます。
会社は秋田になる「木鯨」と言い、地元の樹種だけでなく、様々な樹種が可能なのも魅力で、U値1.3程度の性能を出せるそうです。
気密性は、建築後に実測するので、お知らせ出来るのは9月末でしょうか。
因みに、2015年からK’z-HOMEの新築住宅は、全棟の気密測定と*VOC測定をしています。
*VOC測定とは、厚生労働省が定めた住宅における環境基準の揮発性化学物質の量を定めたものの中から、特に有害で発生し易い物質を5品目調べる。
測定方法は、前日の9時までに建物の換気を全て止め、開口部を締め切った状態にして、翌日9時以降(12時間密閉)に測定、吸引(アクティブ)方式。
測定項目:ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン。
気密測定、VOC測定いずれも、第三者調査会社によるもので、測定結果を公表。