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2018/07/31
耐久性能について
カテゴリー:耐久性能
人生100年時代がやって来ました。
2017年の日本人の平均寿命は女性で87歳、男性でも81歳になって来ました。
1970年頃は、女性で72歳、男性になると67歳が平均だったのですから、約50年で15年も延びたことになりますね。
今30歳の方が80歳になるころには、平均寿命が100歳、なんて時代ではないでしょうか?
人が100年生きるのであれば、人が住まう家も100年持つ必要があります。
ところが、20世紀後半からつくられた日本の家の平均寿命は何と27年!
30年と持たずに、建て替えられているのです。
(因みに、アメリカが75年、ヨーロッパで100年以下の国はありません)
いったい、なぜでしょう?
この問題を解決することで、初めて本当の耐久性能を高める事に繋がります。
新築住宅の性能評価を受ける制度に、長期優良住宅がありますね。
他の先進国に比べて日本の短い寿命の家を長持ちさせようと、政府が始めた制度で、この
評価を受けると、様々な特典が貰えます。
税制優遇、低金利(ローンの場合)、補助金制度などです。
ローン金利の最高額控除を含めると、5000万円の家を建てると、約500万円のお得感がありますから、ハウスメーカーやビルダーの営業アイテムとして使われています。
家を長持ちさせるのですから、確かに謳い文句としては、誠に正しく思います。
ところが、その中身を見てみると、
10年毎の定期点検(有料)、その都度のメンテナンス(もちろん有償)、カルテの作成(施主負担)など、その後の費用負担がかかり、メンテナンスも、施工会社が優先(変更すると特典が無くなる)の為、費用の相見積りが取れない。(施工会社の言い値)
基礎、設備、壁、屋根に不必要なものや、地域によっては、しない方が良い工事も付加されるので、工事費が高くなる。
例えば壁内結露を防ぐ方法としてのべーパーバリアを採用していますが、北海道のような極寒冷地では有効かもしれませんが、真夏の暑さと湿気が問題な地域では、逆に壁内結露を招く恐れがあります。
どうやら、国交省やハウスメーカーを管轄する経済産業省は、壁内結露対策に有効な手段をどのように考えているのでしょう。
田舎の小さな工務店のK’z-HOMEが、偉そうに言うのも何ですが、日本の住宅寿命が著しく短くなったのは、20世紀の後半です。
そうです。
戦後、建売りやハウスメーカーの建物こそが、その対象です。
戦前、昭和初期以前の建物は、築後100年前後になりますが、そうした家は未だにビクともしていません。
古民家再生が流行していますが、基本的に同じ築50年の建物でも、ハウスメーカーや建売物件では無理でも、戦前と同様な建て方をした家であれば、立派に再生可能なのです。
何処が違うのか?
ずばり、構造体でもある「木の環境」です。
木は、伐り出されてからも呼吸を続け、「生きて」います。
腐朽菌や害虫に蝕まれて、初めてその「生」を終えるのです。
ヒノキの柱に傷を付けると、木の香りがするのはその証拠です。
動物である人間と植物の「木」は、死さえも全く異なるのです。
生きていくのに酸素を使って、CO2を吐く人間と、CO2から炭素(C)を溜め込んで酸素を発散する木。
その行為が出来なくなると、途端に死に至る人間と、光合成が出来なくなっても、生き続ける植物「木」。
自然界における完全なる「補完関係」と言えます。
森林に人が入ると、フィトンチッドと呼ばれる成分により気分が良くなる、と言われます。
フィトンチッドは、本来「木」自らを害虫から守る殺虫剤のようなものです。
にも拘わらず、人体には良好に作用する物質を出す「木」とは、何と有難いものでしょう。
その「木」を生かし続けることが、建物(住宅)しいては暮らしを助けることになるのです。
さて木の呼吸とは、何のことでしょう?
湿気を溜め込むと腐朽菌や白蟻の餌食になるので、それを防ぐには水分を抜く事ですが、人工的にどれだけ乾燥しても、空気中の水分を吸収して、12%~15%まで戻ります。
此処まで乾燥が進めば、腐朽菌や白蟻に侵される心配はありません。
また、乾燥が進めば進むほど、木の強度が増す事が確認されています。
K’z-HOMEが採用している、「山長商店の桧と杉」、ツーバイシックスのSPFは、いずれも
SD20(JIS規格:乾燥度20%以内)です。
空気中の湿気を吸放湿出来る状態に保つことが、木にとっての呼吸なのです。
耐力面材(耐震構造用面材)は、一般的には構造用合板が使われています。
構造用合板はその名の通り、合板で出来ています。
合板の原料は、確かに「木」ですが、薄く剥がした板(2㎜以下)を交互に90度ずらして接着剤により張り付けたものです。
木の繊維方向が、縦横になる為、曲げやねじれ等の強度は、その厚み(9.5㎜から12㎜)の無垢板に比べると、非常に強い力を発揮します。
しかし、本質的には木なので、燃えやすく(薄いので、無垢板よりも燃えやすい)水に濡れた場合は、腐朽菌の餌食になり易くも有ります。
そして、最も大きな問題が、接着剤の壁により、湿気が抜け難いことです。(透湿抵抗値)
一般的な構造用合板9.5㎜の場合、5層構造で、4ヶ所の接着層が有り、透湿抵抗は、杉の無垢に比べ1.5倍~4倍有り、土壁や石膏ボードに比べると20~40倍も有るのです。
無垢材は内部が均質なので、湿度がゆっくり移動し、抵抗値が高くても流れます。
ところが合板は、薄く剥がれた板は、あっと言う間に流れ、接着剤のところで流れが滞るので、湿気を含むことになります。
壁内結露で最も早く痛むのは、この構造用合板です。
耐震性は有るが、火に弱く、湿気、虫害にも抵抗力が無い、のが「構造用合板」です。
では、他にどのような材料が有るのでしょう。
K’z-HOMEは以前、火山灰から作られた某建材メーカーの構造用面材を使っていました。
「○○ライト」と言います。
弊社倉庫、私自身の家も使っていました。
が、有る時倉庫の樋が外れて、雨水が外壁に伝わり○○ライトを濡らす事態になりました。
発見が遅れた為、かなりの時間濡れたままの状態だったようです。
壁の仕上げ材を剥がしてみると、○○ライトの表面は見事に溶け出し、中身の火山灰が泥化していました。(表面には小さな蟻がたくさん這っていました)
びっくりして、改めて製品の構成を確認すると、火山灰で出来ているのは、中身だけで、
表面は木質繊維材で覆ったものでした。(撥水加工がしてあり、木質繊維と気付かない)
となると、火に対しても絶対的な抵抗は無く、合板よりはマシな程度と思います。
また、内部の火山灰も「高温処理で焼き加工されて」いる、との事でしたが、陶器のような石灰質にはならず、水に溶けだす程度の固まり具合(焼き具合)のようです。
その割に、当然ですが、「脆い」欠点はそのままです。(釘を強く打つと抜けてしまう)
国土交通省の耐震、耐火基準をクリアーして、認可を受けているのを疑っても仕方ないですが、基準が甘いのか?K’z-HOMEとしては、使えないと考えました。
合板がダメ、○○ライトもダメ、となると、構造用面材に出来るものは何か?
2005年、三菱マテリアルと言う会社が、自社の生産する鉄鉱石の廃材である鉄鉱スラグ
(鉄鉱石を溶かし鉄が抽出された後に残る副産物)をもう一度高温で溶かし、繊維状にして
プレスを加え、板状のものを創り出しました。
出来上がったものは、鉱物由来ですから燃えません。(不燃材認可)
繊維状になっているので、多孔質(穴だらけ)なので透湿抵抗は少ない。(合板の1/50)
無機質なので、水にも腐る心配が無い。
欠点として、無機質特有の「脆さ」は○○ライトほどではないが、合板よりも有るので、固定する釘打ちの圧力には、気を付ける必要がある。
と言う事は、熊本地震のような、繰り返しの強い揺れに対しての不安は残る。
まとめると。
鉱物由来なので、耐火性能が高い。
繊維板なので、透湿性が高い。
無機質なので、虫害に強い。
同上の理由で、水に強い。(腐らない)
耐震性能は、構造用合板の1.2倍、○○ライトと同等。
欠点は、粘りが合板より劣る。○○ライトよりは有る。
以上を総合的に判断して、K’z-HOMEの標準仕様としました。
(脆さを補うために、特に耐震性を要求される建物の場合は、特殊な補強をしています。)
繰り返しますが、構造材を取り巻く環境を透湿抵抗の少ない(木材よりも)材料で包む事により、木の吸放湿の妨げにならないようにすることが大切です。
壁の中に入れる充填断熱材で、最も多く使われているのは、グラスウールです。
安価で、扱いやすい(大工さんで付けれる)ことがその理由です。
では、グラスウールとは何でしょうか?
その名の通り、ガラスを一旦溶かし、繊維状にしたのが、ガラスの羊毛、グラスウールです。
ガラスですから、腐る心配はありません。
透湿抵抗値も、断熱材の中で最も低い値です。
では、なぜ使えないのか?
まず、透湿抵抗値は低くても、抱え込んだ湿気は毛細管現象で取り込み、空気の流れが無いと乾きません。(吸放湿が出来ない)
また、板状にはなっていますが、布団のような状態です。
壁の隙間やコンセント廻り、配線によるズレなどが生じ易く、断熱欠損が出来るのです。
水を含む(壁内結露により)と、重くなって沈み、天井近くが空いているのも見かけます。
これは、施工不良と言うよりも、グラスウールの特性と考えるべきでしょう。
何よりも、吸放湿出来ない材料が、木の回りに有るのは危険と言わざるを得ません。
グラスウールの他に、高気密高断熱住宅と言うと、フェノールフォーム(吹き付け断熱材)
や硬質ウレタンフォームが使われています。
これらは、断熱性能に優れ、気密性向上にも優れた材料ですから、使いたくなるでしょう。
これらを使えば、簡単に気密性能が上がり、C値0.5以下どころか、0.2を出している会社も見かけます。
また、断熱性能数値も桁違いに高いので、UA値0.40以下も簡単に算出する事が可能です。
問題は、透湿抵抗値です。
しかし、フェノールフォームの透湿抵抗値は、合板並みに高く、木の回りをこれで吹けば、一面だけ(室内側)残し、あとは呼吸を止められた、も同然です。
硬質ウレタンフォームもほぼ同じ数値ですから、木の環境を整えるには程遠いと言えます。
このデータは、外壁における外張り断熱材にも言える事です。
外張り断熱にこれらを使うと、外気と湿気のやり取りができなくなるので、室内で発生した湿気は、機械的に取り除くしかありません。
加湿器が売れるので、空調メーカーは喜ぶでしょうが。
生活の中で人は多くの湿気を発生しています。
人は一日の内で自らの体温調節や皮膚呼吸で体重の5%が蒸発しているそうです。
4人の体重が合計200キロの家庭で、半日間家にいるとしたら、10キロ(10L)の水分が体から放出されています。
それ以外にも、煮炊きの水蒸気や冷蔵庫、洗濯機などの家電製品から出る水蒸気は、一体どれくらいなのでしょうか?
最近では、花粉や汚染、盗難の予防などから、室内干しの方も多くなっています。
特に、冬場は外に干しても乾かないので、室内で乾燥させるようになります。
そうしてみると、膨大な湿気が家を襲っています。
結露やカビ対策は、今後の家の耐久性能を高める大きな一因です。
絶対に透湿性の無い断熱材や建材を使用してはいけません。
耐震性能も問題なく、快適でおしゃれな家が出来ても、耐久性に問題があっては、近い将来に建て直さなくてはなりません。
「家は人生に3度建てないと良い家は出来ない」と言う格言が有りますが、そんなことが可能でしょうか?
30年、35年ローンで家を建て、払い終わったら60歳を過ぎてしまいます。
仮に、繰り上げ返済をして、20年後に終わったとしたら、そこから住宅資金として貯金しますか?
あり得ないでしょう。
唯一考えられるのは、アメリカ方式の中古住宅市場が出来上がって、住み替えて売買価格が見合った時です。
子育て世代用に建てた家の間取りが必要無くなり、老後ように住む家を建てる、或は探す。
つまり、4LDKの家を売り、2LDKの家を買うのです。
これなら、仮に4LDKが2000万円で売れれば、2LDKは1500万円で購入し、残ったお金をリフォームや生活費に充てる事も可能ですから、持ち出しは0円です。
おそらく、30年、50年後の人口を考えると、土地の価格は下落すると思えます。
土地の価値が下がると、住宅そのものの価値が、売買の対象になります。
アメリカがそうです。
アメリカでは、新しい土地を購入して家を建てる人は殆どいません。
新築住宅の99%が建売りです。
そのかわり、建売と言っても、2LDKから10LDK(LDKという言い方はしませんけど)
まで、新婚さんが買う家から10億円の豪邸まで、建売としてあります。
土地は家に付いて来るので、敷地面積は言いません。
ベッドルームの数とバスルームの数(4ベッドルーム、3バスルームのような感じ)が家の価値をイメージします。(もちろん、ベッドルームの数もバスルームの数も多い方が上)
3千万円で購入した家は、10年後にメンテナスをキチンとすることで、同じ3千万円、あるいは、物価上昇によっては、それ以上で売る事が出来るのです。
これが、建て替え寿命75年とされるアメリカの中古住宅市場です。
人は、その人生の状況に於いて、住む環境を変えていく、のがアメリカ流です。
一方、長く日本は、住む慣れた場所を変えたくない、環境を変えない人々でした。
しかし、子育てが終わり、年老いてからガランとした家に住み続けるのは、どうでしょう。
建て替えではなく、住み替えの時代が来るのかもしれません。
その時、売る価値もない家では、、、、。
30年、50年後に住み続ける(住み続けたい)家、住宅としての売買が可能な家、そんな家を建てたい、とK’z-HOMEは考えています。
100年を見越した耐久性能はその為にあるのです。