スタッフブログ
2025/02/19
賃貸住宅の現状と未来 -パート2-
カテゴリー:断熱性能 環境 先代社長のブログ 耐久性能 気密性能 窓周り・サッシ 軸組工法
Kz’Homeの提案(固定資産税の観点から見た賃貸経営)
賃貸住宅を計画されている方はもちろんですが、既存の建物を断熱改修することで、「高性能賃貸住宅」にグレードアップしましょう。
国の補助金(省エネ政策など)も利用可能な高断熱化や最新設備化をして資産のアップデートをしましょう。
新築する場合は、償却年数後の価値を想定した建築プラン(性能と機能)を立てましょう。
その観点から、鉄骨の34年やRCの47年は長すぎます。(予測不可能な未来)
いやでも22年の木造を選ぶべきでしょう。(20年後ならば見通すことが可能)
サスティナブル社会に逆行する日本の固定資産税減価償却方式
現在の賃貸住宅の建築構造は、木造、鉄骨、RC造(コンクリート)に分けられます。
構造によって「固定資産の償却年数」が変わります。
「木造」が22年、「鉄骨」で34年、「RC」は47年となっています。
これは、建物の税法上の耐用年数の概念から起算されているように思われます。
「木造アパート」の耐用年数22年! 根拠は何処にあるのでしょうか?
もし日本の木造アパートが22年を過ぎると安全を担保出来ないとしたら。
これまでの賃貸住宅、いわゆる「借家」は「他人の住む家だから最低限の建物で構わない」
そうした意識が「家主」側になかったとはいえないでしょう。
耐震性能と並んで、快適な住環境を提供する「高断熱仕様」が進められてこなかった事実。
賃貸住宅仲介業者の紹介項目の最初に「築年数」が出てきますね。
新しいということが、「きれい」「最新設備」をイメージすることもあるでしょうが、耐震性のような「見えない性能」も影響しているのではないでしょうか。
このような原理で「賃貸住宅」を建てるなら22年以上経った建物は仲介業者から勧められないし、入居希望率も下がってしまうのが実情です。
そこが大手賃貸住宅建築業者の営業手法に利用されてしまう事となってきました。
つまり、減価償却終了直後に「建て替え」を繰り返す、「固定資産商業化」を薦める現象が起きています。
こうした考え方では、入居者目線ではなく利益優先の建物となります。
しかし、時代の変化は人々の暮らし方、考え方から確実にやってきます。
今、新築住宅の分野では「高気密、高断熱」は当たり前の状況です。
子供のころからそのような「家」に育った若者が、「家」を出て賃貸住宅に住むことになったとして、育った我が家よりはるかに劣る「借家」に住み続けるでしょうか?
学生時期や一時的な単身時代ならいざ知らず、家族を持ち期間を定めない、あるいは定めたとしても、「快適な住環境を持つ借家」と「従来のような借家」のどちらを選ぶかは明白ではないでしょうか?
「減価償却後も価値ある賃貸住宅」を所有する喜び
この話の途中でお話しした「Hアパート」(パート1参照)は、当時どこも建てなかった「高気密高断熱」と「自然素材」を基本として最低50年以上を目指した「循環型木造賃貸住宅建築」として2002年に完成しました。
簡単にスペックを並べます。(1戸90㎡メゾネット×3戸=270㎡)
高耐久耐震金物を使った軸組フレーム工法と大壁工法のダブル耐震性能により、等級3を確保。(構造用軸柱は全て120角)
断熱材として「セルロースファイバー」を充填断熱、メゾネット式による上下階の音問題を解決。(隣り合う界壁はダブル充填120+120)
全てのサッシを樹脂と木製の複合ペアガラス(アルゴンガス+LOW-E)UA値1.3前後の性能、玄関ドアを木製としました。
外壁は構造用パネル(ダイライト)の上にモルタル(セメントペースト)を塗り、左官仕上げによる高耐久防水左官材料のジョリパットを塗りました。
この材料は、水性で安全性が高いので、室内の壁にも採用しました。ビニールクロスのような、静電気を呼ばないため、「汚れ感」が無く、「経年変化」として深みを増してくれます。
1階の床は、摩耗頻度が高いので無垢材を3層に貼り合した「スリーレイヤーUV仕上げ」を採用し、2階床はプライベート空間でもあり、寝室も兼ねるので「北欧パイン無垢の30㎜」を採用しました。
エアコンはリビングに壁掛け型40タイプを一台で、2階はオプションとしましたが、当初の10年は3戸の内、ほぼどの方もリクエストは有りませんでしたが、2012年頃からまずは南側寝室、2015年あたりから北側の子供部屋想定の部屋にも希望が有りました。
今現在全3戸の内2戸に両方ともが設置されています。
さて現在この建物が出来て22年が経ちました。
つまり、法定耐用年数が来たことになりますので、銀行への返済も完了しました。
次にこの建物のこれまでのメンテナンスをお伝えしましょう。
外壁は、一部の塗り替えをしましたが全面塗り替えはしていません。
劣化で漏水しそうな箇所はほぼ無いので、このままでもまだ持ちそうですし、美観的にも問題なさそうです。
給湯器は10年ぐらい前に全戸交換しました。
キッチンは1戸のみ10年以上ご入居の方が出られた後、交換しました。(システムキッチンなので、部分交換よりも全面交換としました)
ユニットバスの交換はまだしていませんが、交換時期が近づいているようです。
入退居の回数は、それぞれの戸で数回(3回~5回)なのですが、床の損傷補修工事は1度だけでした。(犬を飼っていたため)
大家さんが犬好きで、ご自宅で2頭(ゴールデンレトリバーとダックスフンド)室内犬として飼育しており、借主もレトリバーを飼っていました。
大きな工事はその程度でしたが、玄関ドアノブ交換やコウモリ退治、換気扇交換等、細かなメンテナンスは年間2~3程度は有ったように思います。
退居された方の殆どが新居を建てられ離れていかれましたが、退居時に「快適だった」と言い残されたことをありがたく記憶しています。
そして現在、3戸のご入居者は安定しています。
ここに挙げた「スペック」には、現在の新築住宅から見ても十分な性能をもっていますし、単に性能だけを追求するのではなく、自然素材を使った「心地よさ」も実現しているところにあります。
外壁がぬりかべや板張りであることは、経年劣化感ではなく経年変化の深みを生み、室内の塗り壁は、空気の酸化を抑え清浄効果を生み、外壁同様経年劣化ではなく経年変化として同様の効果を発揮します。
無垢床フローリングは、調湿効果もあるため冬温かく、夏の足元をさわやかに保ちます。
20年以上前当時のアパートはもちろん、現在のクオリティーとしても十分高いですね。
現在も満室であり、仮にこのような建物を今建てるならば、とても現状の「家賃」では経営出来ない工事費が必要です。
2002年当時の建築費坪当たり50万円程度でしたが、現在ならば倍の同100万円前後になりそうです。
そうすると、家賃設定も倍になりますから、新たな競争相手が現れそうに有りません。
今後、日本の建築費は材料の高騰、職人不足、市場規模の縮小などで上がることは有っても下がることはないでしょう。
そうすると、考えたいのは償却年毎に建て替える方式を止め、経年劣化型建物から経年変化を楽しめる構造と外観、内装や設備を備えることで「減価償却後も価値ある賃貸住宅」を所有することになります。
不動産資産を負の資産にしないため、入退居者様に「快適だった」と言ってもらえる、そんな賃貸住宅を所有する喜びを味わってください。
冒頭で述べたようにこの国の賃貸住宅入居者率は依然として30%以上あります。
しかし、人口減少と住宅余りの現象も増え続けるでしょう。
その中で、選ばれることが必要となってきます。
それが、新しいから選ばれるのであればいつまでも建築費の償却に追われることでしょう。
本当の価値ある建物を建てることによってこの悪循環から逸れるのです。
アパート経営は「減価償却後」からが本当の価値なのですから。
木造アパートなら50年、鉄骨造なら70年、RC(コンクリート)造なら90年が目安になりますが、あなたならどの構造を選ばれますか?