スタッフブログ
2019/10/04
断熱について
カテゴリー:断熱性能
先週、生活温度と寿命の関係をお話ししましたが、温度だけでは快適な暮らしを実現できません。
湿度が密接に関係しています。
28℃の室温でも、湿度が60%以下の場合と75%を超える場合は全く違います。
冬の20℃の場合も、湿度が40%以上あるのと30%以下の場合も同じで低い程寒く感じます。
エアコンの暖房が効きにくいのはそのためです。
さて今回は断熱のお話。
先回、どれくらいのエネルギーで暮らせばいいのだろうか?という疑問で終わりましたが、
私が今可能な「快適で不都合無く暮らすためのミニマムエネルギーハウス」は、一人当たりの年間消費エネルギー1,350kw、乃至は36kw/㎡の家です。
4人家族で年間5400kw(オール電化)又は150㎡(45坪)に相当します。
スペックとして、全館空調で室温を夏27℃、冬22℃に保った家です。
床面積に関しては、小さくすれば必ずしも消費エネルギーが下がるものではないので、参考です。
現在の日本の1人当たりの消費電力平均は2,200kwのようですから、4割くらいの省エネにして、全館空調を実現しています。(2200kwは当然全館空調ではありません)
しかし、パリ協定で結んだ内容には2030年に2008年の排出量の半分にする、としています。
家庭用をどれくらいにするとは提示されていませんが、仮に50%削減とするなら1100kwを目指すことになります。
4人家族で4400kw、乃至は30kw/㎡(44坪)でしょうか。
又は太陽光発電による0エネルギー(発電と消費の差)を考えると、現状の20%程度を発電すれば可能になります。
本当は、太陽光発電の製造物エネルギーや廃棄物処理を考えると、現在のソーラー発電にはまだ問題が有りますが。
では、このレベルの断熱性能の家はどんな断熱材で出来ているのでしょうか?
現在、日本の断熱材の95%はGW(グラスウール)が使われています。
高性能グラスウールは、24㎏もので熱伝導率(熱を伝える速度で小さい程高性能となる)
0.040W/ⅿ.Kとされています。
また、最近よく使われている吹付型のフェノールフォーム(発砲系)断熱材には0.034W/ⅿKと更に優れた性能を出しています。
冷蔵庫用に開発されたフェノール樹脂の仲間には0.0022W/ⅿKを誇るものもあります。
しかし、これら樹脂系の断熱材は、非常に軽量であり断熱性能は高いが熱容量は有りません。
熱容量とは何か?
熱は空気から伝わる熱と、赤外線を受けて温まる輻射熱が有ります。
太陽光を受けて熱くなる壁や屋根は空気温度よりはるかに高くなり、真夏には70℃を超えることもしばしばです。
窓から入る熱で熱くなるのもこれです。
すると、熱容量が低い断熱材では防ぐことが出来ず、夏の小屋裏が途方もなく熱くなるのはこのためです。
昔の人はこの暑さを防ぐために屋根瓦の下に土を乗せました。
土の熱伝導率は1.15W/(ⅿ.K)で意外にもあまり高くありません。(セメントよりはいい)
それでも日中は瓦から伝わる熱を受け止め、午前中は室内に伝えません。
午後になり、熱容量を超えると徐々に屋根裏へ伝わり、逆に夜になると暑くなるのはそのためです。
壁の中の土も同じですが、壁は屋根より日射時間が少ないので、そこまではなりません。
ただし、西側の壁は別です。
このように断熱性能は、あくまで空気断熱の場合の数値で、輻射熱を受けた場合と異なるのです。
私の住む日本は、温暖化の性もあるのか、年々夏の暑さが厳しくなっています。
今年の夏も、6月の気象庁の長期予報で「冷夏」でした。
確かに7月の梅雨明けが遅かったことで、最初はそれほどでもなかった暑さが、8月に入り猛暑日の連続となり、9月末でも真夏日(30℃超え)を記録しています。
確実に暑くなっています。
この分では10月にエアコンをつけるのも当たり前になるかもしれません。
今までの断熱材は、「冬」を基本に考えられてきました。
つまり、空気断熱です。
しかし、これからは冬だけでなく夏の断熱を考えなくてはいけません。
夏の断熱は遮熱と熱の位相(熱容量)を考えなくてはいけません。
冬型の断熱材では解決出来ないのです。
では、夏型の断熱材とはどんなものでしょうか?
ずばり、木質繊維でできた断熱材です。
木材を製材するときに排出する端材を繊維状に分解し、再度圧縮したものです。
木材はその原型は円錐形をしています。
しかし、ほとんどの建材は角材ですから、その周辺の材料の多くは燃料として使われるくらいでした。
しかし、バイオマスエネルギーとして使うには、木材はその生成に数十年を必要とし、
一瞬にして燃料にして燃やすのはエネルギーパスの循環型社会に則していません。
木材の生成以上の年月を使うことこそ、サスティナブル社会の構築になります。
つまり、住宅の耐久性を高め70年以上の維持をすることで、再生可能な木材の本質に近づきます。
木質繊維断熱材は、その用途に応じて密度を変えることが可能です。
屋根や壁のような輻射熱を大きく受ける場所には、熱容量を大きく持つ180㎏/㎥の物を、室内の壁で吸音や更なる断熱を目的とする場合は、50㎏/㎥のものを使い分けることが出来ます。
180㎏/㎥の密度があると、熱伝導率は0.048W/(ⅿ.K)とGWより3割程度劣りながら、熱容量は7.5倍ありますから、外気面に当たる熱が裏面に伝わるまでに相当な時間がかかります。
実験データで、裏面まで表面と同じ温度になるのに11.5時間(180㎏/㎥、厚さ60㎜)
となっていますので、真夏の太陽が屋根を照らして陰るまで8時間としても十分に受け止めることが出来ます。
壁であれば6時間以上照らされることはありません。
密度が高くなると熱伝導率は上がりますから、室内充填用の50㎏/㎥のものは0.038まで数値が上がります。(もちろん熱容量は小さくなりますが)
そして、何よりも木質繊維断熱材の他の断熱材と違うところは、自然素材であり「調湿する断熱材である」ということです。
最初に触れた、快適な暮らしを実現するには「快適な温度帯と快適な湿度帯で暮らす」ということです。
セルロースファイバーも元は「木」ですから同じですが、GWや化学物質で出来た断熱材には調質機能は有りません。
21世紀のその後を考えると、断熱材の素材としてこれ以外はあり得ないことが分かります。
あとは、冷暖房機器を含め、いかに省エネ化するか!ですね。